[完]大人の恋の始め方
どんどんリハーサルは進み、あたしの出番が来る。
ヒロインの華蓮(かれん)の親友の友達という立ち位置が、あたしだ。
そして、一瞬で羽鳥(中島)に惚れるという内容。
「華蓮!久しいわね!」
ありすちゃんが、あたしの腕を取りながら、華蓮に近付く。
「あ、マリアさん。
今日は会えてよかったわ」
華蓮は、一見大人しい女だが、実は子供で口が悪いのが、笑いを誘っている。
「またまたー。
今日は随分大人しいのね?」
「うっさいわ!
つっ、つーか、その子は誰?」
と、華蓮はあたしを指差す。
「え?あー。
私の友人の、杏里よ♪」
実は、あたしはあたし自身として、この映画出演なんです。
「は、はじめまして」
ヤバッ
吃っちゃった。
「ごめんねぇ、杏里って緊張しやすくて」
「緊張しやすいなんて、可愛らしいお嬢様ですね」
あっアドリブだ!
「えっ…いえっ///」
「はい、カーット!」
その言葉に、一気に脱力する。
「杏里、頑張ったわね」
「ありすちゃん…ごめんなさい」
「え?アドリブのこと?あれなら…」
その瞬間、あたしの頭をグリグリと撫でる。
「杏里ちゃーん!今の使うからねー」
「か、監督!?」