[完]大人の恋の始め方
監督は、満足そうにあたしを、見下ろしていた。
「君が噛んだ台詞、杏里っぽくてよかったよ~」
「え!?
ほんとうですか?!」
ビックリして思わず、ありすちゃんに飛び付いた。
「よかったねえ、杏里♪」
緊張だらけだったあたしにとって、監督の言葉は救いで。
そのあとも、何だかんだ皆さんに助けられながら、撮影は無事終了した。
そして、ホテルで部屋でくつろいでいるときのこと。
「杏里ぃ、いるぅ?」
ドアの向こうから、ありすちゃんの声が聞こえて、あたしはドアに向かう。
そして、開けると、一気にありすちゃんが流れ込んできた。
「どうしたの、ありすちゃん。って、優里花さん!?」
目にしたのは、紛れも無く優里花さんで。
「やっほ!
優斗に頼まれて、来たの」
「優斗さんに?」
また、なんで?
首を傾げると、優里花さんはくすっと笑った。
「心配なのよ、杏里ちゃんのこと」
そう言って、鞄を置く。
「心配って……」
「ほら、中島蓮の一件もあるしね」
……。
確かに、それもあるだろうけど……
優斗さん。
今日会えないって思うだけで、なんだか辛いよ…。