[完]大人の恋の始め方
ラスト1日となった今日。
あたしは、二人がただの執事とお嬢様の関係ではないことを知り、悲しみながらも応援するシーンとなった。
…よりによって、なんで中島蓮に一目惚れする役なのよ。
むすっとしていると、ありすちゃんに、こちょこちょっと、腋の下をやられる。
「ちょっ、ありすちゃんッッ」
なんとか、擦り抜けて彼女をジロリ。
すると、彼女はきゃはっと笑って、自分の頬を指差す。
「杏里。
スマイル、スマイル♪」
……そっか。
あたしの私情は、挟んじゃいけない。
深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。
「うん!頑張るね!」
ほんとは、ムカつくし。
話だってしたくない。
ただ…これは仕事だから。
自分に言い聞かせて、やっとあたしのシーンを、終えた。
拍手をされる中、目に映ったのは
「優斗さん!?」
拍手をしている優斗さんで。
あたしは、思わずその胸に飛び込んだ。
だいすきな香りが、あたしを支配する。
「おいおい、急に抱き着くなよ」
とか言ってるくせに、その笑顔は優しくて。
「あ、高杉さん」
美麗さんや、中島蓮が寄ってくる。
「やーん。いつからいらしてたんですかぁ?」
美麗さんの猫撫で声が、気持ち悪い。