[完]大人の恋の始め方
彼女の視線に気付いて、ぎこちなく笑う。
すると、美麗さんはムスッとした顔のまま、あたしと優斗さんの前………、ではなく。
中島蓮の元へ。
そして……。
「ちょっと、ちゅうもーっく」
美麗さんは、中島蓮の腕を掴んで、お得意の猫撫で声を出した。
あたし達が首を傾げると、美麗さんと中島蓮の腕が組まれる。
「あたし達、実はお付き合いさせて貰ってますッッ」
まるで語尾にハートが着いている。
「へー、そうなんだ」
優斗さんは、そんな二人を無関心そうに見据える。
あたしは、そんな優斗さんの腕を掴む。
やっぱり、間違いじゃなかった。
友美は、騙されたんだ。
本当は、今すぐ怒鳴りたかった。
けど、優斗さんの横顔が、それを許さなかった。
***
家に着くと、あたしはソファーに身を投げる。
そんなあたしの隣に優斗さんは、そっと腰を下ろす。
何も喋らない部屋では、時計の針がチクタクとなるのが、やけに大きい。
優斗さん、なに、考えてるんだろ…。
遠慮がちに、優斗さんを覗く。
すると、たまたま目があって。
そのまま唇が重なる。
「………んっ」
触れるだけのそれは、すぐに離れた。