[完]大人の恋の始め方
初めて知る事実に、複雑な気持ちになる。
もちろん、優里花さんはお姉さんだから、優斗さんのこと、詳しく知ってても普通。
でも、あたしは?
二人で暮らし初めてもう半年。
彼女にもなったのに、あたしは知らないことが、多すぎる。
「お待たせ致しました。当店では、この3種類を提供させて頂いております」
店員さんの声でハッとして、それを見る。
大人っぽい シンプルなデザイン。
それをお借りして、一つずつ嗅いでみる。
……けど。
「あれっ?
どれもちょっと優斗さんの、香りと違う…」
一番近い香りもあったけど、微妙に違う。
「あら、当たり前じゃない。
香水はね、温度で微妙に変わるのよ。
ただ杏里ちゃん。普通そんなに気付かないはずなんだけど」
初めて知る事実に目を見開いたあと、今度は赤面する。
あたし、どんだけ優斗さんのこと嗅いでるのよーっ
「ふふっ
とりあえず、こんな感じの香りが普段なわけ。
ただ、それは仕事スタイル」
優里花さんは香水を店員さんに渡し、適当にマフラーを手にした。
「だから、今度はこれと全然違う、杏里ちゃんの香りを渡すのよ!」
レジに向かいながら、そんなことを言ってのける優里花さんに、圧倒される。