[完]大人の恋の始め方




逃げよう。



そう思ったとき……。



「あの、杏里ちゃんですよね?」



女子高生のグループがあたしに詰め寄る。


わわっ…



「え、あの…」



「その香水、メンズでしたよね!?
誰にあげるんですか?」


「もしかして、彼氏ですかぁ?」


「それ杏里ちゃんのオススメですかぁ?」




なんか、いろいろ聞かれて、分からない。



だけど、こんなに囲まれたのは初めてで…。



何だか怖くなってしまう自分がいた。




と、そのとき



「はい、そこまでね?
あんまり騒ぐと、事務所も黙ってないよ?」



声を聞いて、パッと上を向く。



なんで……大翔…?



「えっ、もしかして杏里ちゃんの彼氏?!」



大翔を見て更に騒ぎ出す女子校生だけど…。



「そんな風に子どもには見えちゃうの?
一応俺、マネージャーなんだけど?

君たち、見て分からない?」




キラキラと王子様スマイルで、ニコッと微笑めば、皆イチコロ。



さすがだよね。



「ほら、杏里行くぞ」



大翔はあたしの腕を引いて走り出す。



優里花さんもそのあとを、付いて来る。



「大翔、なんであそこにいたの?」



走る背中に問い掛ける。



「たまたま。
杏里が囲まれててビビったよ」



すみっこの影に、あたしたちは入る。



そして、大翔はあたしに帽子を被せた。



「被っとけ」



優しい笑みに頷いて、あたしは帽子を押さえて見せた。



< 472 / 500 >

この作品をシェア

pagetop