[完]大人の恋の始め方
「まぁ、杏里ちゃんには関係ないわよ」
ふふっと含み笑いを見せる彼女と、呆れ笑いをする大翔。
あたしにはその意味が、分からなかった。
***
「で、香水にしたんだ?」
今日は、終業式。
クリスマスイヴを明日に控えた今日。
あたしは友美に、昨日のことを伝えていた。
「うん。でも、どうやって渡したらいいか…
優斗さんは、なんも言わないし」
イヴってことを忘れるくらい、忙しいのだろうか?
「そんなの、ご飯食べて貰って、それからプレゼントだよって渡せばいいでしょー」
「だって緊張するし…」
するんだよ、緊張。
「あんたねぇ、もうちょっと大胆になんなきゃ、優斗さんだって辛すぎるでしょー」
午前のうちに放課ってこともあって、今クラスには誰もいない。
そんな静かなクラスに、友美の呆れた声はやけに響いて。
「なんで辛いの?」
「ん?
………あぁ。杏里には関係ないわよ」
あたしは、友美に首を傾げる。
……なんか、デジャヴ。
昨日も優里花さんに言われたし…。
「とっとにかく!
流れに任せてプレゼント渡せばいいの!
友も、今日が勝負だし…」