[完]大人の恋の始め方
「もしもし?」
ちょっと笑いが混ざった声で、優里花さんは予想していたことがわかる。
「優里花さぁん!!!」
「逃げちゃだめよ?」
思わず叫んだあたしに驚くこともなく、急にそういう優里花さん。
「…え?」
「恥ずかしいからって、逃げちゃだめ。優斗もきっと楽しみにしてるから。
深呼吸して、渡してごらん?」
優しい口調でそう言われちゃ、なんも言えない。
「…はい。頑張ります」
電話を切り、再びプレゼントに目をやる。
寂しそうにも見える袋。
それを手にしようとしたとき、ケータイが鳴った。
短いこの着信音は、友美からのメール。
受信ボックスを開くと
ちゃんとお別れ出来たよ!
次は杏里の番(`・ω・´)
がんばってよ!!
と入っていた。
ちゃんと出来たんだ…。
凄いな、友美。
あたし、なに恥ずかしがってるんだろ。
友美の方が大変だったのに、ちゃんとやってる。
あたし、逃げないって決めたじゃん。
あたしはゆっくりと深呼吸して、プレゼントを手にする。
「よしっ。渡さなくちゃ」
意気込んで立ち上がると、ちょうどリビングに優斗さんが入ってくる。