[完]大人の恋の始め方
二人で過ごすクリスマス
〔杏里Side〕
"優斗さん、だいすきです"
この言葉を発して、暫し沈黙が走る。
この世界には、もう誰もいないんじゃないかって錯覚するくらい、静か。
そんな中で、あたしの心臓は激しく動いていて。
冷静になって考えてみれば、あたしは結構大胆な行動をしているわけで。
お互い、中々声を出さない。
と、そのとき。
ガサッ……
ちょっとの振動で、あたしの上げた袋が、音を立てた。
そして、それを合図かのように、優斗さんはこちらに振り返った。
真剣で、強い光を宿った瞳に、ドキッとする。
そして、ゆっくりと顔が近付く。
それに従うかのように、あたしも目を閉じた。
……が、何も起こらない。
不思議に思って目を開けると、切なそうな優斗さんがいた。
ゆっくりあたしから離れると、頭を掻き、珍しく落ち着きがない。
なんで?
なんで、何もしてくれないの?
むしろイライラしているように見える優斗さんに、なんだか悲しくなって。
あたし、魅力ないのかな?
再び、不安を覚えた。
やっと、優斗さんとなら、大丈夫って、思えたのに。