[完]大人の恋の始め方
関係
暫くすると、あたしは心が落ち着いた。
「…優斗さん。ありがとう」
あたしはそっと、優斗さんから離れる。
何だかんだやっぱり、優しいんだね。
「俺様の胸を借りるとは、いい度胸だな」
いつもは、ムカつく表情。
しかし今は、そんな事も微笑ましかった。
「何だよ、にやけやがって。気持ちわりぃ」
「気持ち悪いって酷いなぁー」
そんな会話をしながら、車に乗り込む。
助手席に座れば、優斗さんの香りがする。
「シートベルトしろよ」
「うん」
あたしが、したのを確認すると、車は発進する。
「なぁ杏里。どうかしたのか?」
「なんで?」
あたしの返事に、可笑しそうに喉を鳴らして笑う優斗さん。
「お前なぁ。んな涙目で、なんでとか、むしろこっちの台詞だよ」
いってもいいのかな?
でも、言わないのは言わないで、心配をかけてしまう…?
一人で悩んでいると、あたしの頭をぽんぽんと撫でる優斗さん。
「イジメにでもあったか?」
………ずるいなぁ。
人が弱ってるときには、そんな優しい声かけるなんて。
「優斗さん、聞いてくれる?」
「ふっ。最初っから聞いているんだけど?」
「ふふっ。そうだね」
あたしは、優斗さんに秘密を話し出した。