[完]大人の恋の始め方
あれは、中学2年生の春だった。
中学真ん中のこの年、新しい先生がやってきた。
名前は相葉 大翔。
彼来たとき、本当に体育館が壊れるってくらいの、奇声が上がった。
そのくらい、大翔先生は、あたし達を一瞬でトリコにしたのだ。
周りがキャーキャー騒ぐなか、あたしは固まっていた。
大翔先生は、あたしが思い描く王子様、そのものだったから。
教室に戻れば、みんなの話題は大翔先生だった。
カッコイイよねーとか
惚れちゃうなんて、何度も聞こえた。
皆凄いなぁ。
そんな、恥ずかしくて言えないよ。
純情なあたしには、変だけど、恥ずかしいと思っていた。
「杏里ぃ~!!んもぉヒロ先生カッコイイよぉ~」
「え、ヒロ先生?」
大翔をヒロって、友美らしいなぁ。
「かわいいでしょ?あー、担任持たないのが残念っ」
「体育で会えるんだから、いいんじゃない?」
大翔先生は、体育の先生だからね。
その後、大翔先生の人気が落ちることはなく、先生に告白したという子が、何人も現れた。
そんな皆を、あたしはいいなぁ、と見てるだけ。
友美も彼氏がいるのにも関わらず、騒いでいる。
一方のあたしは、好意はあるものの何も言えない。
そんなあたしが、先生と関わりが出来たのは、体育祭が近付いた9月だった。