[完]大人の恋の始め方
「あぁ?てめぇ1人でやれよ」
不良は、あたしの腕を再び掴もうとする。
「っと」
しかし、大翔先生はそれを、させなかった。
「悪いんだけど、そうもいかないんだよねえ。」
大翔先生は、不良に有無を言わせず、そのままその場を去った。
「あの先生、ありがとうございます」
あたしは、ラインカーを運びながら先生を見る。
「どう致しまして。松本って、本当隙だらけだな」
「そうですか?」
ちょっとだけ、トゲのある言葉が気になった。
でも、こうして物置に、先生がついて来てくれるのだけで、嬉しくなる。
「やっと、全部揃った」
チェックリストをもう一度確認する。
「先生、終わりました」
先生の方を見ると、先生は複雑そうな笑みを浮かべた。
「松本、無理に実行委員に誘って悪かったな」
「いえいえっ!むしろ楽しかったです!!」
あたしは先生に、満面の笑みを向けた。
「…………」
「…………」
二人が言葉を発することがない、この物置。
みんな帰ってしまったのか、やけに静まり返っていた。
大翔先生にジッと見つめられているこの時間。
嬉しいような恥ずかしいような…。