[完]大人の恋の始め方
次の日。
あたしは朝、大翔にメールをした。
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今日お話があります。
教官室にいて下さい。
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その日は、ほんと落ち着きがなかった。
そして迎えた放課後。
誰も居なくなった教官室に、足を踏み入れる。
「大翔」
あたしが名前を呼ぶと、大翔は、ふにゃりと笑顔を見せる。
その笑顔は、悔しいくらいに、あたしの心臓を狂わせる。
「あの……」
あたしは、言葉に詰まる。
大翔……ずるいよ。
あたし、そんな笑顔見たら、何も言えない。
あたし、弱いのかなぁ…?
「杏里…?なんかあったんじゃないの…?」
………あぁ。ダメだ
あたしには、言えない。
「あっ、体育祭、楽しみだなぁって!」
「なんだよ、急に。杏里はリレー出るんだっけ?頑張れよ」
あたしは、小さく頷く。
あたしの意気地無し。
なにも言えない自分が、嫌になる。
「なんか、ごめんね?」
「なんで謝るんだよ。へんな杏里。」
あたしは、大翔にキスされた。
その瞬間、あたしの心は酷く傷付いた。