[完]大人の恋の始め方
「その人が、今回、あたしの担任になったの。久しぶりに会って、どうしたら良いか分からなくなっちゃったの。」
話している間に、家につき、ソファーに近付く。
座ろうとすると、優斗さんに引っ張られ、優斗さんの膝の上に座らされた。
少しは抵抗しようとしたが、背中からギュッと抱きしめられたため、抵抗をやめた。
「優斗さん、ごめんね。こんな話しちゃって」
すると、優斗さんは、何を言うわけでもなく、ただあたしを抱きしめる優斗さん。
あたし達は、暫くそうしていた。
「なぁ、杏里。杏里は俺が怖いか?」
不意にそんな質問をされた。
多分、あたしが大翔にフラれた時を聞いたからだろう。
確かに、あの凶変が怖くて、男の人が怖くなった。
優斗さんの性格が、変わった時も、正直怖くて仕方なかった。
でも、今は……?
「優斗さんは、怖くない。なんでだか、分からないけど、優斗さんは大丈夫」
それを聞くと、優斗さんは、あたしの頭を撫でた。
「それなら、いいんだ。話してくれて、ありがとうな」
優しい笑顔。
"ありがとう"なんて…。
あたしのほうが、感謝の気持ちでいっぱいなのに…。