[完]大人の恋の始め方
「不細工?誰が?」
優里花さんは、悪びれもなくあたしに、笑いかける。
あー…まるでお手本みたいな笑顔だ。
「優里花さん、あたしが不細工って話です。みたら分かるじゃないですか」
そんなお手本を見ても、笑顔が出来ないあたし。
「え…優斗、この子って…」
「そう。超がつく程の鈍感」
二人の密会に、まるで入れないあたし。
なんの話してるのかなぁ?
そんな間抜け面で、自分達を見てくる杏里に、優斗と優里花はため息をつく。
「(……無意識とは恐ろしい)」
二人の意図など、まるで分からない杏里は、ただため息がピッタリだった事に感動していた。
凄いなぁ…
やっぱり姉弟だなぁ!!
「あっとー…、真面目にドレス撰ばなきゃね!」
優里花さんは、「何色が好き?」と、あたしを見る。
「あの、本当に大丈夫ですか?見立てるのが大変って…」
今更だけど、なんでこんなにも不細工な顔で生まれて来ちゃったのだろうか…。
「本当に無意識娘ね。優斗が大変そう」
ボソリと呟く優里花さん。
「…え?」
その言葉が聞き取れなくて、聞き返す。
「ううん。あのね、杏里ちゃんは、可愛いから何でも似合うし、見立てるこっちが迷っちゃうから、大変って言ったのよ?」