硝子の桜-the LastSong-
独りぼっち
人外の二人のスピードは決して人間には真似できないものだった。
空気を切り裂くように森を抜け、地を蹴り飛ぶ。
高く高く。
「――っ」
初めて感じた浮遊感。
近付いた夜空。
胃の辺りがふわふわして気持ちが悪くなる。
神威にしがみついていたティアの力が篭った。
「大丈夫か?」
空に浮いていた鉄の塊に素早く着地すると、神威はティアの背を撫でた。
真っ青な顔色をして震えているのに、こくこくと頷く。
「無理すんなバカ」
「ていうか、いきなりあのスピードで飛んだら大抵の人間は気分が悪くなります」
アルトの言葉に思わず固まる。
今まで生きてきた中で人間を抱きしめながら走ったことがなかったから知らなかったのだ。
「…鬼畜なんだか優しいんだか、どっちかにして下さいよ団長」
「るせぇ」
そうは言いつつ自分の無知のせいで嫌な思いをさせてしまった。
悪かった、素直に謝る神威を見て驚いたアルトはとうとう殴り飛ばされた。