硝子の桜-the LastSong-
「金目のものは全て積み込め。違反金に見合わせる額にはそれくらいでちょうどいい」
真夜中。
淡い月の光を浴びながら少女は部屋の外に耳を澄ませていた。
騒がしい。
こんなに騒がしいよるは初めて。
大勢の声と足音が屋敷中から反響して聞こえるようだった。
「…だれ?」
一つの足音が部屋の前で止まる。
唯一ある扉がゆっくりと開いた。
「アンジェ、お姫様」
「――…アンジェ」
向けられた挨拶に小さな声で応える。
静かに侵入してきたのは銀髪に紅い瞳の男。
貼付けたような笑顔を浮かべながら鳥籠に近付いてくる。
「…まさかこんなところに隠し部屋があるとはな。あのオヤジ、大した趣味だ」
「…ご主人のお客様?」
「お前の主人は死んだ」
あっさりと放たれた言葉に少女が首を傾げる。