硝子の桜-the LastSong-
ぷつり、
指の腹に小さな傷がついて血が伝う。
掬うように舌を這わせると少女の全身がか細く震えるのが分かった。
「…逃げねぇの?せっかく足枷を解いてやったのに」
血に負けない真っ赤な舌が濡れた唇をなまめかしく嘗め取る。
少女は逃げる素振りを見せない。
それどころかドレスの裾を翻して少年の胸に擦り寄った。
「つめたい」
「――…な、」
「つめたいのに」
言葉を失う少年の胸から聞こえる鼓動のリズム。
初めて感じる想いを不思議に思いながら、少女は瞳を閉じた。
「あたたかい」
触れ合う場所に移る自分の熱。
生きている証だ。
それに気づいた時の少女の表情を見て少年が息を呑む。