硝子の桜-the LastSong-
じっとした視線を感じて少女は逆に聞き返す。
「あなたは?」
「俺は…」
神威ユウ。
答えるより早く、巨大な玄関にたどり着いた。
ドアを蹴破って外に出る。
現れたのはより強い月光の輝きと、二人の間を吹き抜ける爽やかな秋風だった。
遠くにある森がザァ…っと音を立てて揺らぐ。
夜空には星が瞬いていた。
少女は神威から降りて裸足の足で土を踏んだ。
隠しきれない激情が胸の中を飛び交っている。
感嘆の言葉はなかった。
涙も笑顔もそこにはなかった。
ただ、セカイを全身で受け止めていた。
「…これは…?」
ぺたりと地面に座り込み手の平で大地をなぞる。
「――今お前が触れているのは、土だ」
神威はその後ろ姿を見守っていた。
風がもう一度吹いて髪の毛をさらっていく。