さらば、ヒャッハー
小悪党な魔法使い
(一)
弟の冬月から話を聞いた時には、にわかには信じられなかった。
黄昏時が去った時刻。まばらにしかない外灯が暗さを薄暗さに変える道筋で、秋月(あきつき)はやっとのことで溝出が起きないことを演技ではないと認識した。
やっとのこととは、“念のため”を交えた脊椎の33分割。ご丁寧に分節に切り分けた骨らを溝出に見せつけるようにして、踏み砕いた。
ここまでやれば、「やめてけれえぇ」と涙ながらに命乞いする溝出。そのリアクションがないことで、やはり溝出は起きないままなのだと知った。
「……、いつもこんなことを?」
「嫌やわぁ、わたるんはん。こんなの優しい方どすえ。ああ、にしても、兄さんの手さばきは見ていて素敵やわぁ、見惚れるわぁ、ああ、もう、兄さんはやっぱり僕の目標やねぇ」