さらば、ヒャッハー


「わたるんはん、ほんまに、この先にあんさんの家があるん?」


腕にまとわりつく冬月をそのままにしながら歩く秋月が問う。


こうやって聞いたのも、ここいらがおおよそ、人が住む場所には思えなかったのだ。


道路はあっても廃れ、脇には木々ばかりの山の中。街灯あっても、人の気配は一切なく、車とて通らない。


民家の明かりらしきものが一切ない、人の住める場所とは思えなかった。


怪しい店屋はないにしろ、この何もなさ加減の方が薄気味悪くも思えた。


「兄さん……」


「大丈夫どすえ、冬月。何があっても、兄ちゃんが守ったるわ」


「兄さんは優しいねぇ、せやけどやっぱり怖いからもっとぎゅっとしてもええ?」


「ええよ」


「えへへー、兄さんの匂いは落ち着くわぁ」


< 30 / 237 >

この作品をシェア

pagetop