さらば、ヒャッハー
「わたるんはん、ほんまに、この先にあんさんの家があるん?」
腕にまとわりつく冬月をそのままにしながら歩く秋月が問う。
こうやって聞いたのも、ここいらがおおよそ、人が住む場所には思えなかったのだ。
道路はあっても廃れ、脇には木々ばかりの山の中。街灯あっても、人の気配は一切なく、車とて通らない。
民家の明かりらしきものが一切ない、人の住める場所とは思えなかった。
怪しい店屋はないにしろ、この何もなさ加減の方が薄気味悪くも思えた。
「兄さん……」
「大丈夫どすえ、冬月。何があっても、兄ちゃんが守ったるわ」
「兄さんは優しいねぇ、せやけどやっぱり怖いからもっとぎゅっとしてもええ?」
「ええよ」
「えへへー、兄さんの匂いは落ち着くわぁ」