さらば、ヒャッハー


絶対に怖がっていない策士な冬月をツッコムことなく、渉は秋月の質問に答えた。


「もうすぐ着きます。山の中にあるんで、僕の家」


「家族と暮らしているん?」


「いえ、一人暮らしです」


聞いておきながらも、まさか一人暮らしとは思わなかった。


――こんな場所で一人暮らし?


物騒はもとより、コンビニもスーパーもない一帯に運転免許を持たない少年が住居を構えているのが不思議だった。不便でしかないし、不都合だって生じるだろうに。


「一人暮らしやなんて苦労してるんやねぇ」


「いえ、そうでもないですよ。とても、安心して眠られる場所なので」


安心して、が秋月には意味深に聞こえた。


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