もっと大切にする~再会のキスは突然に~
「なに、見てんの?そんなに観察しなくてもベビーの診察は前の病院でもしてたから要領はわかるよ。」
ちょっと迷惑そうに私を上から見る彼。
「そ、そんなつもりじゃないし。」
彼の手元なんて全然見えてなかった私だったけど、『ちゃんとできるの?この人』って疑わしく見られてるって思って気を悪くしたみたい。
そんなんじゃないんだけどな。だって彼の大きな手はふにゃふにゃ柔らかいベビー達をびっくりさせないよう柔肌を滑るように動いていて。
少しの刺激でも泣き出すことが多いベビー達もまるでお母さんに抱かれているように大人しくなっている。
「結婚してないんだな。」
私の胸元に揺れるネームタグにチラッと視線をうつす。
「まあね。まだいいや、結婚は。今楽しいし。」
嘘半分。いや、7割くらい。
今年30歳のいいオトナ女子が結婚を意識しないわけは無くて、看護学校の同級生達からも続々と招待状が届く今日この頃、彼もいない私は全く焦ってないわけでもなかった。