もっと大切にする~再会のキスは突然に~
取り残された私の横に並ぶ余裕顔の彼。
「気をきかせてくれたのか?いい後輩だな。ん…葵。」
そう言いながら当たり前のように私に差し出される左手。
「何よ、それ。なんで手なんかつなぐの。しかもこんなところで。」
カラオケの前にはもうほとんど人はいなくって、街灯の少なさで少し離れると誰かわからなくなるけど。
「なんだ、こんなところじゃなかったらいいんだ。」
「違う。どこでもダメ。なんで絡んでくるのよ。私、他のスタッフに河合クンとの関係言ってないから。あんまり話しかけたりしないでよ。」
「ふ~ん。それでいいんだ?葵は。」
「いいに決まってる。河合先生、うちのスタッフにも人気があるみたいですから、やっかまれたら御免だし。」
わざと先生付けで呼んでみるけど、ふいに歩を休める彼の眼は宝物を見るように優しく、でも真剣で、私をじっと見ていた。