もっと大切にする~再会のキスは突然に~
「カヌー中に溺れたって。意識ははっきりしないけど、痛覚はあるって。呼吸もなんとか今は保たれてる。で、助けようとしたお父さんもうちにくるから。お父さんは比較的軽症みたいだけど、子供が心配だからって譲らないみたいで。」
早口で状況を伝える繭子ちゃんの言葉を聞いて、他のスタッフは要りそうな物を更に準備し、お父さん受け入れの準備も始める。
一般的にはこういう場合、お父さんは他の病棟で入院を受けてもらうべきで、いくらうちの病棟が内科も含むといっても小児の入院を最優先して取り掛かれるよう救急外来でも対応してくれるはずだけど。
ベットを引いて救急外来までいくと、その理由がわかった。
休日というのに、そこはたくさんの患者さんで埋め尽くされていた。
晴天が続いたゴールデンウィークは老人の熱中症やぐったりした小児の救急搬送で猫の手も借りたい忙しさのようで、他病棟にも続々と入院患者が運び込まれているみたい。