もっと大切にする~再会のキスは突然に~
バタンッ。
ロッカーの扉を閉める音で、ハッと我にかえる。
自分の姿を見ると白衣を脱いだまま、ストッキングは足首に丸められたままで、慌てて私服に着替える。
更衣室内にはもうゆきちゃんはいないようで、どのくらいの時間考え込んでいたのかと思う。
答えの出ない問題に、足取りも重くタイムカードを押すと繭子ちゃんの姿が見える。
「繭子ちゃん、もうあがれたの?忙しそうだったのに。」
足早に駆け寄って声をかけると、めずらしくぼんやりしていた様子の繭子ちゃんはぎこちない笑顔をうかべる。
「あ、うん。ちょっと記録、手を抜いちゃったから。なんだか仕事にならないから…ふふっ、葵もなんかサエない顔してる。ご飯食べに行こうか。」
きっちり纏めた綺麗な色素の薄い髪をほどいた繭子ちゃんは、仕事中とは違う顔でふんわり笑う。
「うんっ。行く、行く。」