もっと大切にする~再会のキスは突然に~
「お腹いっぱい!もうコーヒー1杯も入らないわ。」

テーブルいっぱいに並べられた料理の数々を平らげた繭子ちゃんがお腹をさすっている。

満足いくまでご飯を食べた私たちはもう日付が変わりそうな時間にお店ののれんをくぐる。


お店を出るとすぐ、病院の外周に咲く桜の並木に視線を移す。
まだ三分咲きほどの薄ピンクの蕾は春の訪れを告げるようで、なぜか胸がざわつく。

「もう明日から4月か。」

ふいに口を吐くと、その聞こえるか聞こえないかの微妙な呟きも聞き逃さない繭子ちゃんは憂鬱そうに「使える医者達がくるといいけど。」と表情を曇らせた。



お互い病院から徒歩数分のアパートだけど別方向の私たちはお店の前で手を振って別れる。

さっきの胸のざわつきが少し気になっていたけれど、久しぶりの連休は何しようかと考えているとすぐに頭の片隅に追いやられてしまった。



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