もっと大切にする~再会のキスは突然に~
「泣いちゃいなよ。我慢してもひとつもいいことない。」
そう言う繭子ちゃんの声も泣きそうなくらい弱弱しかったけれど、嗚咽を堪える私にはそのことを考える余裕はなくって。
もともと大きくもない目がほとんど開かないくらいに腫れた頃、私の涙も枯れ果てたようだった。
「あ~泣いたらお腹空いた!」
我ながら現金だと思うけど、もう数年ぶりに思いっきり泣いたら案外すっきりした自分がいる。
「ふふ、私も。すいませ~ん!じゃんじゃん持ってきてくださ~い。」
繭子ちゃんはお店の女将さんに両手を合わせてごめんねポーズでお願いする。
常連となってる私達の様子を見て、どうやら邪魔をしないように待っていてくれたみたい。
もしかしたら私が気付いてなかっただけで、繭子ちゃんがお店に入るなりそう頼んでくれていたのかもしれないけど。
…うん、きっとそう。繭子ちゃんのすることはいつも抜かりがないから。