もっと大切にする~再会のキスは突然に~
ようやく鳴り終えた携帯を見ないままマンションに入ろうとすると、エントランスの柱の影から伸びた手に腕を捕まれる。
「ちょっ、何?」
いきなり伸びた手にはびっくりしたけれど、まだ明るいエントランスでは相手の顔が容易に確認できる。
「ストーカーじゃないんだから、びっくりさせないでよ。」
精一杯虚勢を張ってその手を振り払おうとするけど、いつも優しく柔らかく私に触れるその手はビクともしない。
「何が気に入らない。」
私の質問には答えてくれない河合クンの、いつもよりもっと低くて冷たい艶声にびくっとする。
まわり道せずにまっすぐに問いただすその言葉に、咄嗟に出た言葉。
「関係ない。」
もう私にかまわないでと訴えるように、久しぶりに河合クンの目をジッとみる。