魔法少女はじめました
「うん…合格!」

 突然ソフトボールが大声を出す。

「はっ?」

 合格も何も、撫子には全くなんのことだかわからない。


「春野撫子!きみ、魔法少女やってみない?」


 撫子には、俊足食欲睡眠欲のほかに、誇れるものがひとつある。

 それは、この学園のトンデモ生徒たちと触れあううちに培われた、スルー能力。


 撫子は、向日葵のような爽やかな笑顔を浮かべた。

 そして…ソフトボールをむんずと掴むと、全力投球!!

 運動神経抜群の撫子の、綺麗なサイドスローが決まった。

 光の玉が見えなくなったことを確認すると、撫子は何事もなかったかのように再び目を閉じた。

 全力で今の出来事を忘れ、こんどこそ楽しい夢を…


 見られなかった。

「ちょっと!何するんだよ!」

 音速で舞い戻ってきたソフトボール。

 撫子はあからさまに「げっ」という顔をする。

「…あたしは、そこにソフトボールがあったから投げただけ!」

「嘘つけ!…それにしても豪速球だったなあ、うん、やっぱり決まりだ」

 ソフトボールはなにやらぶつぶつと呟いていたかと思うと、

「きみ、今日から魔法少女ラブリーピンクね!よし決定!!」

 とんでもないことをのたまった。
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