魔法少女はじめました
「やだっ!」

 撫子は即座に切り返す。

「やだって言われたってー、もう決まったことだしー」

 このソフトボール、微妙に腹の立つしゃべり方である。

「だって困るよ!あたしは部活忙しいし、キャラじゃないし?ホラ、この学校、もっと似合う子がいるでしょ?なんか特殊能力持ちとかさ」

「いやいや、それが問題でさあ。他の子も何人か当たってみたんだけど、わざわざ魔法の力を与えるまでもないっていうか…人外までいるし。ほんと何なの、この学校!」

「…たしかに」

 思わず深く頷いてしまう撫子。

 先輩後輩同級生問わず、ただの高校生とは思えない面子が揃っている天神学園である。


 ソフトボールの愚痴は続く。

「さっきなんか実験室でわけわかんないクスリに突っ込まれそうになるし、保健室では…うーっ、思い出したくもないっ」

「そ、そうか…大変だね」

 お人好しの撫子は、ついついソフトボールに同情してしまう。


 …その瞬間、ソフトボールの目がぎらりと光った。

(目があるのかどうか以下略)

「そう!そうそう大変なんだよ!魔法少女見つけなきゃ仕事終わんないのにさ!だから…」

「やだから」

 撫子、即答。

 しかしここであきらめるソフトボールではない。

「ふーーーん、きみってそーゆーヒトなんだ?か弱い妖精が困ってるのに無視するんだ?」

 撫子の良心に訴えるソフトボール。

 効果は抜群である。

「う」

 撫子の胸がちくりと痛んだ。

「おっかしーなー、春野撫子サンって頼りになるかっこいー子だって聞いたのになー?地域の住民が困ってるのに見過ごすんだー?ふーん」

「うっううう」

 卑怯なまでの精神攻撃に、撫子は唸る。

 
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