エロスからタナトスへ
とにかく、何もない。

あるのは、着てきた服と、少々のお金。

もちろんパスポート。

これは、冗談でもなくしてはならないね。

ソンミンさんって、ジョンフンの知り合いだから、

男の人、だよね。

でも、買い物に行かなくちゃ。

そのくらい聞いてもいいよね。

ツー、ツー、ツー···

出ないな。

「ヨボセヨ?」

「あ、もしもし、ソンミンさん?」

「そうですけど···誰?」

「あの、ジョンフンの知り合いのものですけど···」

「え?ああ。」

「ジョンフンから、聞いてます?」

「いいえ。」

えっ!どうしよう。

「あの、日本語できる人ってことで···」

「はい。少しなら。」

大丈夫かな。あんまり親切そうでもないし···

「あの、近くで買い物したいんですけど、

 服とか食べ物とか。」

「だったら、マンションを出て、右に行って···
 
 うまく説明できないな。

 もう少ししたら、僕も出かけるので、いっしょに来てください。」

「は、はい。」

「30分後に、玄関で。」

「はい。わかりました。」
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