エロスからタナトスへ
彼は、俳優。

女優さんと仕事でキスをしたり、肌をふれあったりするのだ。

気にならないわけがない。

そのことをパソコンのサイトで知った。

どんなにがんばっても、女優さんにかなうわけがない。

私は自分がとてもみじめで、みすぼらしいものに思えてきた。

帰ってきたジョンフンに聞いた。

「スミンさんとのラブシーン、どうだった?」

「ん?緊張した。」

「それだけ?」

「だって、人が何人もいて、カメラもあって、

 それでいい演技しないといけないんだよ。」

「感じた?」

「そんなこと思う暇ないよ。」

「ほんとのこと言って。ね。ん?」

「ほんとだよ。でも、ちょっとヤバかったかも。」

「ジョンフンのバカー!スミンさん、女の私が見ても、

 セクシーだと思うもん。でも、でも、バカ、バカ、バカ!」

「詩雨子さん。そんな・・・しかたないじゃないか。」

「私のこと、すこしでも考えた?悪いと思った?」

「いっしょにはできないよ。」

「私はジョンフンの何?」

言ってしまった。
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