エロスからタナトスへ
運転席に彼が座り、

私は目立たないよう、後ろの席に乗った。

車が動きだすと、彼が

「しうこさん。」と呼んだ。

「はい。名前覚えててくれたんですか?」

「うん。」

「もしかして、一度会った人の名前、全部記憶しちゃうとか?」

「まさか。」

じゃ、どうして?

「あの…どこへ?」

ジョンフンは、目を細め、唇だけで笑うように「ふっ。」

と言ったまま、ハンドルを握っていた。


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