初恋のキミへ。

記憶の中で

+裕也side+



俺は『前世の記憶』を持っている。

いきなり言われても、信じられないよな。

まあしかし事実そうなんだ。

『前世の記憶』って言っても、すべてがわかるわけじゃない。

俺自身、俺の前世のヤツの名前さえわからねぇ。

そいつの視点から見てたものが、記憶として俺に見えるから、鏡ででも見ない限り、顔はわからない。



サイレント映画って例えればいいかな。

音はない。色はある。

そういうものが、目を閉じれば、いつでも浮かんでくる。

たくさん浮かんでくるわけじゃなく、いくつかの場面だけが出てくる。

その繰り返し。



その数少ない場面の中にいつも、一人の女がいる。

栗色のきれいな髪に、茶色いネコ目、桜色の唇。


一緒に海へ行ってるところ。

笑い合ってるところ。

桜の下で、キスをしているところ。


そして、病院。

俺の前世がたぶん、ベッドに寝ていて、横でその女が泣いている。

女にむかって、俺の前世が伝えてるんだ。



『生まれ変わっても、きっとキミを好きになる。』



その言葉通り、俺は、記憶の中でしか知らないこの女が、好きだ。

―――時を超えて







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