美味しい時間
カサブランカで甘く酔う
「ふぅ~」
食器を洗い終えタオルで手を拭いていると、何か冷たいものが顔に当てられた。
「キャッ」
その冷たさに驚き小さな悲鳴を上げると、後ろから笑い声が聞こえてきた。
「はははっ。ほんと百花って可愛いよな」
また可愛いなんて……。そこに本心はどんだけあるのやら。
そう思うのに、ちょっと嬉しくってニタニタしてしまう私って……。
顔を何とか真顔に戻し課長の方を振り向くと、「ほらっ」っと手にしていた何かを私にポイっと軽く放り投げた。
それを両手で受け取る。
さっきの顔に当てられたのは、これだったんだ。
カクテル。春らしいピンク色の小さめの缶。
「桃のカクテルなんだ。春限定缶だって」
イスに腰掛けると、黙って課長を見つめる。
「もう少し飲まないか?」
その声には艶っぽさが、目には熱を帯びているように感じた。