美味しい時間

「な、なんのことですか?」

課長は何でもお見通し。今さら誤魔化したってしょうがないのに、悪あがきをしてしまう。

「ひとりで良からぬことを妄想してたみたいだけど」

そこまで分かってるとは……。やっぱり侮れない相手だ。
やっぱりこれは歳の差、いや、経験の差だろうか。
悔しいけれど、これは私がどれだけ努力しても埋まらない差。
少しだけ肩を落としショボンとしてると、今度は腕をグッと引かれた。
フラフラと足が動き、課長の膝にちょこんと座ってしまう。

「あ、あ、あの……すみません」

慌てて立とうとしたら、ギュッと腰を抱かれてしまった。

「逃げなくてもいいじゃん」

「逃げるんじゃなくて、重いですよね」

「全然。まったく」

さっきよりも強くホールドされてしまい、びくともしない。
それどころか、甘えるように顔を擦り寄せてくる。
恥ずかしい、くすぐったい。それに耐えるようにモゾモゾ動く。

「何? 感じちゃった?」

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