美味しい時間
自分から軽く触れるだけのキスをするつもりだっただけに、この激し過ぎるキスに息の仕方を忘れてしまう。
息苦しさに身悶えると、ほんの少しだけ唇が離れた。
喘ぐように息を吐くとそれを見計らってか、再び唇を奪われる。

「慶太……郎……さん……」

次第に頭の中がぼんやりしてきてぐらりと傾きそうになった身体を、課長の両腕が支え抱きしめてくれた。

「悪い。百花が相手だと調子狂うっていうか我慢できなくて」

激しい口付けに、上がってしまった息を整える。
課長が立ち上がり私を抱きしめ直すと、頭を優しく撫ででくれた。
気持ちよさに身を委ねる。

「夜も付き合いもこれからだ。キス以上のこともいっぱい教えてやる」

その言葉にドキッとして顔を見上げれば、口角をほんの少しだけ上げてニヤリと笑う。
そして頬に優しい口付けを落とすと抱きしめている腕を離し、私をイスに座らせた。

「もう少し飲みたいんだ。付き合えよ」

そう言って自分もイスに座り、ビールを飲み始めた。
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