美味しい時間
私もさっき手渡されたカクテルに口をつけた。
お互い何かに緊張しながらも他愛のない言葉を交わし、幸せな時間を過ごしていた。
しかし時間が経つに連れ、口数も減っていき……。
何とも言えない空気が、部屋中に充満していった。
その空気に耐えれなくなったのか、課長が口を開く。
「あ、明日も仕事だし、そろそろ……」
急に話し出すから、身体がビクンッと反応してしまった。
は、恥ずかしい……。
顔を真っ赤にして俯くと、課長がガタッと音を立てて立ち上がる。
さっきよりも大きく身体が跳ねる。
課長、何で立ったんだろう……。
俯きながらも課長の気配に集中していると、少しずつこちらに近づいて来ていた。
何? 何しようとしてる?
勝手に力が入る。心臓はバクバク音をたてはじめ、身体か小刻みに震えだした。
しばらくすると肩にポンっと手が置かれ、声が出そうになるのを必死に堪える。
「俺がそんなに怖い?」