美味しい時間
食堂に着くと、人の多さに圧倒される。
ここは値段が安い割に味もよく、メニューも豊富。
社員の半数以上が利用しているし、打ち合わせなどで来ている外部の人も利用できるとあって、毎日こんな感じだった。
だから普段の私はお弁当持参。
あまり人ごみが好きじゃないんだよね。
食券販売機の前に立ち、ズラッと並んでいるメニューを見る。
けれどやっぱり、いつもと同じボタンを押した。
「卵とろ~り親子丼!」
るんるん気分で食券を取り、カウンターに向かうと、仲良しのおばちゃんがこっちを見て笑っていた。
「どうせ今日も親子でしょ?」
「正解っ!」
そう言って食券を渡すと中にいたおじちゃんが、もう親子丼を持って立っていた。そして私に近づき、小さな声で囁いた。
「ももちゃん、味噌汁おまけ」
そう、茶目っ気たっぷりに微笑むおじちゃん。
「わぁ、いつもありがとね」
私も小声でお礼を言い、空いている席を探すため食堂内をキョロキョロと見渡した。