美味しい時間
しばらくそのままでいると、バスルームの扉がバタンッと開く音が響く。
慌てて起き上がり布団の上に正座する。
Tシャツにトランクスという姿の慶太郎さんが、タオルで頭をワサワサ拭きながら部屋に戻ってきた。
こういう時、何て声を掛ければいいんだっけ?
あたふたしてしまい、思わず……。
「お、お帰りなさいませ」
布団の上に三つ指ついて、頭を下げた。
盛大な笑い声が部屋中に反響する。
「も、百花……いつの時代だよ……」
そう言って、涙を流しそうな勢いで笑っている。
「だ、だって……」
口を尖らせてむくれていると、課長も私の目の前に正座した。
「お先にお風呂いただきました。百花も入ってこいよ」
温まった手で頬を撫でる。
顔を真っ赤にしてすくっと立ち上がり用意しておいた着替えをつかむと、ダッシュでその場を離れた。