美味しい時間

お風呂から出るとささっと身体を拭き、用意しておいた一番可愛い下着を身に付けた。
鏡に自分を映しだし、確認する。
そして小さな声で自分自身に言い聞かす。

「よしっ大丈夫。頑張れ、私」

お気に入りのパジャマを来て、大急ぎで髪の毛を乾かした。

「ふぅ~」

準備万端、呼吸を整える。
手に拳を握ってバスルームを出た。
緊張からか歩き方がおかしくなっているのにも気付かないまま、部屋に戻る。

「お、お風呂、気持ち良かった~」

まるで大根役者が、棒読みしているようなセリフ口調。
自分でツボにハマってしまい、プッと吹いてしまった。

「はははっ! それは良かったな」

布団に寝転び、部屋に置いてあった雑誌を見ていた課長が、肩肘ついてこちらに振り向く。もう片方の手を徐ろに上げると、クイックイッと手招きで私を呼んだ。

「百花。おいで」

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