美味しい時間

そんなことを思う自分に気づくと、急激に恥ずかしくなってしまった。
慌てて口付けから逃れようとしたけど、なかなか許してくれない。

しかし、しばらくすると名残惜しそうにチュッと音を立てながら唇を離し、ごろんと私の横に寝転んだ。

「お前を傷つけたくないけど、我慢も限界だな……」

そう力なく呟くと、私に向かって腕を伸ばした。
手を髪に差し入れ、その指が私の髪を優しく梳く。その感触があまりにも気持ちよくてそっと目を瞑る。

「百花……。お前を抱きたい。俺を受け入れてくれないか……」

髪を梳いていた手が首の下を抜けて肩を掴むと、熱さを感じる腕に抱き寄せられる。
ゆっくりと背中を上下に摩る手に、体がゾクッと震えた。



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