美味しい時間
「そう、良かった。じゃあ駅前のカフェに来て下さるかしら」
「分かりました」
私の返事を聞くと満足そうに、しかし少しだけ哀れみの笑みを残して
その場から離れていった。
私は急いで机の下から袋を取り出すと、美和先輩に近づいた。横に
しゃがみ込むと美和先輩が顔を下げる。
「百花、大丈夫? ごめんね」
「先輩は何も悪くないですよ。ひとつお願いがあるんですけど……」
周りをきょろきょろ見渡してから先輩に袋を渡し、耳元に顔を寄せた。
「第3会議室に課長がいるから、この袋を渡してもらえますか」
「それはいいけど、何て渡せばいい?」
「う~ん……、部長に急な仕事頼まれたって伝えといて下さい。
お姉様とのランチのことは言わないで……」
俯きそう言うと、ポンっと頭に手がのった。笑顔で「了解」と呟くと、
先輩は袋を抱え込んでフロアを出ていった。