美味しい時間

一度席に戻り、引き出しから携帯とお財布を取り出す。主任に声を掛けると、
足早にその場を離れる。

小走りに走りカフェの近くまで着くと、少し乱れている呼吸を整えた。
本当にランチするだけで、呼び出されたわけじゃない。ここは臨戦態勢を
とったほうが良さそうだ。両手に握り拳を作ると、小さな声で、でも力強く
「よしっ」と自分自身に気合を入れた。

カフェのドアを引くと、チリンチリンと可愛い音がなる。
顔を正面に向けると、さっき私を誘いに来たお姉様が手招きをしていた。
手をグッと握り直して、そこに向かう。
近くまで行くと、壁を隔てた向こう側にあと4人の先輩お姉様たちがいた。
その迫力に、息を呑む。

そして、いつも課長のデスクの一番良い場所で話し込んでいるお姉様、
倉橋冴子が腕を組んでキッと睨みながら口を開く。

「いつまで立ってるのっ。早く座ってよ」

明らかにイライラした口調で、そう促される。
言われるままにイスに腰掛けると、私を挟むようにお姉様たちが座った。

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