美味しい時間

ここはしょうがない。課長に顔を近づけながら手招きをする。それに気づいた課長も、ニヤリと口角を上げて顔を近づけてきた。

「そんなことして、俺を誘惑してるとか?」

手招きしていた手が、プルプルと震えだす。
うぅぅぅぅ……殴りたい。
でも相手は私の上司。殴るわけにはいかず、大きく息を吸って、怒りを静めた。

「そんなこと、してません」

たぶん、今の私は顔が真っ赤になっているんだろう……怒りで。
なのに、何を勘違いしたのか、課長は嬉しそうにしていた。

「お前の反応は楽しいよな」

「私は楽しくありません」

ほんと、おめでたい人だ。

「課長、気づいてます? 女性社員の目が課長に集中してること」

「そうか? 別に気にしなくていいぞ」

「私は気にするんですっ! どっか行ってください」

息も絶え絶え、そう訴える。
すると課長は、訳の分からないことを言い出した。

「じゃあ明日から、俺の分の弁当も作ってきてくれるか?」

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