美味しい時間
ジェラートの微笑み
翌朝目が覚めると、思っていたより普段と変わらない自分がいることに驚く。
それでもやっぱり仕事に行く気にはなれず、会社に電話を掛けることにした。
始業時間にはまだ早いので誰が出るのかドキドキしていると、携帯の向こうから
聞こえてきた声に驚きながらも、ホっと息をつく。
「はい、◯◯建設機械サービス販売促進課、若月です」
「あっ美和先輩? 藤野です。おはようございます」
「百花? こんな早くどうしたの?」
それはこっちのセリフだ。クスっと笑ってしまう。
「美和先輩こそ、何でこんな時間にいるんですか?」
「うん? 昨晩デートだったから残業できなくてさ。今頑張ってやってる
ところ。で、何か用?」
「えっと……。今日、休もうと思って」
美和先輩が「ふ~ん」と何かに気づいたような声を出す。
「美和先輩?」
「また何かあったんだ。課長絡みだよね?」
「はい……」
さすが美和先輩。私のことはなんでもお見通しだ。
「分かった。主任には伝えておくよ」
「お願いします」
先輩はまだ何か話したそうだったけれど、そのまま携帯を切ると、またベッド
に寝転んだ。