美味しい時間
そうだよね。直属の上司は課長なんだもん。本来辞表は課長に提出するべき
なんだろう。でも今は不在だし、直接だったら提出できなかった。
だから主任に提出したんだけど……。
やっぱり、そう簡単にことは運ばないよね。
デスクに頬杖ついてそんな事を考えながらフロアを見渡していたら、出入口から
美和先輩が現れた。
もう席に着いている私を見て、大げさ過ぎるジェスチャーをして驚いてみせる。
「なんですか、美和先輩。私が早いといけません?」
「お、おはよう、百花。また何かあったね」
「おはようございます。先輩はするどいですよね」
まだ時間があるという先輩を連れて休憩所まで来ると、先週からの話を掻い
摘んで話した。
「そっかぁ。百花が自分で決めたことだから何も言うつもりはないけど……」
ニヤッと含み笑いをして私の顔を覗き込む。
けど……何だって言うんだろう。
「私はまだ、百花と仕事が出来ると思ってる」
「なんでですか!? さっき辞表提出したんですよ」
「私の勘だね!」
そう言いながら目の前にある自販機で缶コーヒーを2個買うと、ひとつを私に
手渡してくれた。