美味しい時間
「藤野。今日6時には上がれそうだから」
また出た……。東堂課長。
「課長その買い物、絶対ですか? 1人でも行けるんですけど」
「お前に拒否権はない。これ、上司命令」
何が上司命令だ。偉そうに。
でも、まだまだペーペーの私には、反論することも出来なくて……。
「夕飯奢ってやるから、一緒に食べような」
えっ?夕ごはん奢ってくれるんだっ。
だったら買い物くらい付き合ってあげるとするか。
何を奢ってもらおうかなぁ~。
そんなゲンキンなことを考えて、にそにそしていると、また私の頭に手を乗せて、くしゃくしゃと撫でた。
「好きなもの奢ってやるから、考えとけよ」
そう言って、給湯室から出ていった。
あれ? 私なんでドキドキしてるんだろう……。
それがどうしてなのか分からない私は、無意識に課長が撫でた頭を触っていた。