美味しい時間
百花と呼ぶあの声。頬を優しく撫でる手の感触、温もり。
私たちはもう別れたというのに、どうしてあんなことをしたんだろう……。
課長の行動も気持ちも分からなくて、考えれば考えるほど寝れなくなってしまっ
たのだ。
身体はひどく疲れていて早く眠りたいと悲鳴を上げているのに……。
もう一口お茶を飲み大きなため息をつくと、またフラフラしながらベッドまで
戻る。そしてゆっくり布団に潜り込むと、身体を小さく丸めて目を瞑った。
そんな事を何度か繰り返していると、いつの間にか窓の外がうっすらと明るく
なっているのに気づく。するとその明るさにホッとしたのか急激に睡魔に襲わ
れ、お昼近くに携帯電話が鳴り響くまでぐっすりと寝てしまった。
『百花っ、いつまで寝てるの。出かけるよ!』
美和先輩の電話口から聞こえる大きな声に一気に目が覚めると、大急ぎで支度を
整え、強制的に指定された場所まで向かった。